カズオイシグロ 忘れられた巨人 愛 復讐
あの2005(平成17)年発売の『わたしを離さないで』から10年後か...。
待ちに待ったブッカー賞作家・カズオイシグロの最新刊『忘れられた巨人』(翻訳:土屋政雄/早川書房)が、すでに5月1日金曜日に発売されたと知って、お恥ずかしながらの遅い購入と読書へ。
物語のあらましは、遠い地で暮らす息子に会うために長年暮らした村を後にした、アクセルとベアトリスの老夫婦による旅物語。
若い戦士、鬼に襲われた少年、老騎士・ガウェインといった、さまざまな人々に出会いながらも、雨降る荒野を渡り、森を抜け、謎の霧に満ちた大地を旅する二人の直面するは、第三者的に実感する戦いと復讐のこだま。
中でも、二人にとって失われた記憶や愛と密接している謎の霧は、記憶を戻すということは悪い記憶も受け入れなければならない、という運命を暗示しているかのようで、心に沁みてしまった。
それでも、アーサー王伝説を舞台にしたファンタジーとあってか、後味の悪さの残らなかったのは、何より。
いずれにせよ、老夫婦の愛に温かくなり、いつでも寄り添う姿に、美しく憧れしまうことが、最大の収穫だった。
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