かぐや姫の物語 アカデミー賞 あらすじ 感想
2015(平成27)年2月23日月曜日、ハリウッドのドルビー・シアターにて世界最大の映画の祭典「第87回アカデミー賞」授賞式にて...。
長編アニメーション賞を受賞したのは、前年2013(平成25)年度に続いてのディズニー作品である、『ベイマックス』...。
やはり個人的には、『かぐや姫の物語』に、受賞してほしかったなあ。
ただでさえ、ノミネートによる期待が高まっていただけに...。
それは、あの『竹取物語』を原作とした高畑勲監督・スタジオジブリ制作の日本のアニメーション映画として、2013(平成25)年11月23日土曜日より公開されて...。
何よりも、あのアニメーターの描いた線を生かした手描き風のスタイルが使用されて、背景も動画に近いタッチで描かれ、両者が一体となり「一枚絵が動く」ような画面、特に、"生き物の躍動感"、目に優しかったのが、心から嬉しかっただけに、本当に惜しかった。
どうしても、ハリウッドから見れば、ただの日本人としての美的感覚に過ぎない、ということ???
しかし、だからと言って否定したくない。
あの1960年代の黒人による公民権運動を契機に、イングランド系移民すなわちWASP(White Anglo-Saxon Protestant)を第一とする考えから、出自を前提とした考えに移行しつつあるはずだから、日本人という出自を前提とするアメリカ人の考えは、アメリカ全土には浸透していないものの、半分前後は浸透しているはず。
さて、肝心の物語とは...。
竹の中から生まれ、すぐに成長して美しい娘に育ち、求婚者たちを次々と振ったあげく、満月の夜、迎えにきた使者とともに月へと去ってしまうという、古典的に語り継がれている展開を前提として...。
何と、キャッチコピーは、「姫の犯した罪と罰」。
かぐや姫はいったい何のために地球にやってきて、なぜ月へ帰ることになったのか、この地で何を思い生きていたのか、といったありのままが描かれていて...。
そして、誰も知ることのなかった「かぐや姫の心のうち」を垣間見ることに...。
全体を通して、どのカットも、先の手描き独特の繊細で柔らかなタッチであることはもちろんのこと、生き物の躍動感いっぱいで...。
音楽も、伸び伸びとした曲、悲しい曲、琴の音色、いずれも素晴らしいものばかり。
肝心のかぐや姫(声:朝倉あき/幼少期:内田未来)の幼少よりの愛らしさはじめ、翁(声:地井武男・三宅裕司)と媼(声:宮本信子)の姫への深い愛情による、かぐや姫の心の少しずつの変化も、見逃せないもので...。
特に、最後の瞬間...。
心が引き裂かれるような、あの月を背景に駆けるシーンが...。
月から観客を眺める赤子のかぐや姫は、「私はいつか、また地上に転生しますよ」との語りかけ...。
「この世は穢れてなどいない」との言葉....。
心に強く残った。
同時に、あなたたちも、すべてが露と消えるその瞬間まで、喜びとともに、悲しみや苦しみをも、しっかりと噛みしめながら、今の瞬間を生きてください、と語りかけられているような夢見心地に...。
幸せとは何なのか?
生きるということはどういうことなのか?
この人生で本当に大切なものは何か?
本当に、今、僕たちは生きていると言えるのか?
何度も何度も、心が揺さぶられて、考えさせられてしまった。
いずれにせよ、実際に観てよかった思える作品の一つとしてめぐり逢えたことは、心より嬉しかった。
映画の全国公開からほどなく、同年12月にWOWOWで前後編の2回にわたって放送された『高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。~ジブリ第7スタジオ、933日の伝説』もしかり。
この映画の製作にあたっての、高畑勲監督の3つの疑問とは...。
1. 数多の星の中から何故地球を、日本を選んだのか?
2. かぐや姫は、月に帰るまでの歳月、何をして過ごしていたのか?
3. かぐや姫が、月世界で犯した罪と罰とは?
これらの疑問の答えを見出すべく、難解な古典文学の『竹取物語』を、アニメーション表現の限界を超える試みとして、エネルギー溢れる生きた映画として、現代によみがえらせることに挑む高畑監督と第7スタジオのスタッフの姿すべてとして、試行錯誤と暗中模索の第7スタジオ制作現場を密着取材した渾身のドキュメンタリーとしては、いずれも巧妙に仕上げられていて...。
中でも、声を担当した名優たちの姿も、印象深いもの。
すなわち本作でも、かねてからのジブリアニメ作品の多くにみられるように、一般芸能人を多数キャスティング。
特に、その中の一人である名優・地井武男にとっては、本作が遺作となってしまって...。
セリフの収録に関しては、作画完成前に声を吹き込むプレスコ形式を採用したため、2011(平成23)年にはすでに収録が終了。
体調を崩す直前の地井武男の演技が確認できて、ほとんどのシーンを担当。
本編とドキュメンタリー、それぞれDVD/Blu-rayとしての発売は、2014(平成26)年12月3日水曜日。
4本編そしてドキュメンタリーを、改めて鑑賞すれば、ますます奥深くなるはず。
映画『かぐや姫の物語』を、初日に観に行った時の、あの感動...。
忘れられない。
まさに最高傑作だった。
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